< 引用その6 >

 グラズノフは(中略)手短に言えば、小さな不幸な人々が問題になっているときには、偉大な原則性を発揮したりはしなかった。わたしたちの見るところ、彼はもっと重要な人物、重要な事件のためにこの原則性をとっておいたのである。結局、人生におけるすべてのことがらは、重要なものと重要でないものとに分けることができる。重要なことがらに対するときは原則的であることが必要であり、重要でないことがらに対するときは、その必要がないのである。もしかしたら、これは人生の基本的な知恵かもしれない。
 ときにグラズノフは子供のようでもあったが、ときには、偉大な賢者のようでもあった。彼はわたしに多くのことを教えてくれた。わたしはそのことをずっと考えてきたが、あるいは人生の目的のすべては、まさしく、人生において重要なものは何で、そうでないものは何かを理解することなのかもしれない。これは悲劇的なことではあるが、実際、そのとおりなのである。
 昔のある祈祷について、どこで読んだか、記憶ははっきりしない。それはほぼこのようなものであった。「神よ、わたしが耐えられないものを変える力を与えたまえ。神よ、わたしが変えられないものを耐える力を与えたまえ。神よ、この二つのものを区別する知恵を与えたまえ」。
 この祈祷がわたしの気に入るときもあれば、これを憎むときもある。これで人生は終り、わたしには力もなければ、知恵もないのである。(p297〜298)

 

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