ショスタコーヴィチの証言

S.ヴォルコフ編 水野忠夫訳 中公文庫

 

 僕がこの本を好きなのは、必ずしもショスタコーヴィチの曲が好きだからというわけではないのです(いや、ショスタコーヴィチの交響曲、好きなんですけどね。特に第7番)。

 この本は、一般的には、著名な作曲家による旧ソ連体制の暗黒面の暴露本として評価されているようですが、必ずしもそういう部分に惹かれているわけでもありません。

 さらに言うと、そもそもこの本は「偽書」の疑いが濃厚とされています。それも旧ソ連の体制側からのみならず(こちらから「偽書」説が出るのはなんの不思議もないでしょう)、「西側」の研究者によっても否定的な研究結果が出ているというのだから、これは実に「疑わしい」本だという事になります。

 しかし、それすらも、さほど僕にとっては問題ではなかったりします。
 要する僕はこの本(に納められている証言)が、そのままで好きなわけで、それがショスタコーヴィチ本人によるものであるかどうかは、僕にとっては二次的な問題なんですね。

 では、この本の何が良いのか?

 端的に言って、ここで語られている「証言」は、隅から隅まで、僕にとって新鮮なのです。ここには考え抜かれた知見があり、それが選び抜かれた表現によって的確に表現されている。そういう気がします。

 そして、この本で繰り返し述べられている、かつての旧ソ連の知識人が置かれていた困難な状況。今、僕が置かれている状況とは全く別物であるはずなのに、僕にはどうしても他人事として読むことが出来ません。それがなぜか?は自分でもよく分からないのですが。

 くだくだしい説明より、実際に読んでいただいた方がいいかと思います。
 以下、引用を行います(多分、延々と)。
 どっちかというと、誰かに読んでもらいたいからというよりは、気に入った言葉を書き写したいという欲求に従った結果ですけど……(^^;)。

 対談を元にしている(ということになっている)ため、話の脈絡が奇妙に飛ぶことがあるのですが、それもまた味という事で……。
 もしピンとくるものがあるようでしたら、実際に本を買われると良いかと。

 厳密に言うと、これは著作権法に認められているところの引用の範囲を逸脱しているかもしれませんね。でも、これによって損する人は誰一人いないと思うので、あまり深く追求しないで下さい……(^^;)。

 なお、以下の文章の著作権は当然、標記の人物・出版社に属するものです。また、文末に書いてあるページ数は中公文庫版のものです。あと、引用文に直接リンクを張るのはご遠慮下さい。

 

その1  ・その2  ・その3  ・その4  ・その5  ・その6  ・その7  ・その8

 

 なお、「証言」の偽書説については次のホームページが参考になります。
 「Shostakovich Myths Debunked」(英語ですが……)
 (
http://www.az.com/~redrick/Shostakovich.html

 ショスタコーヴィチに関する日本語ホームページでは、こちらがお薦め。まだ一部工事中のようですが、それでもリンク集など充実しています。
 「Dmitri Dmitriyevich Shostakovich
 (
http://develp.envi.osakafu-u.ac.jp/staff/kudo/dsch/dsch.html


 さらに余談ながら、昨年(1998年)、旅行でモスクワに行く機会があり、その際ショスタコーヴィチのお墓も訪ねてきました。
 その時の写真です。

 

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